次の日。
吉井くんに会いたいような会いたくないような、
複雑な気持ちになりながら、海くんと学校へ向かった。
隣の席の吉井くんに、
これからどう接したらいいのか、
昨日から考えているこの答えがみつからなくて、
教室の前で、ふと立ち止まった。
「普通にしてあげな、吉井のために」
吉井くんのために?
海くんは、私の肩をぽんとたたくと、
隣の教室に入って行ってしまった。
普通に、
吉井くんのために、
そっか.......
私は、うん、と自分に頷くと、
思い切って教室の中に入った。
教室の中に吉井くんが見えて、
その後ろを通り過ぎ、自分の席に座ると、
吉井くんの方をちらっと横目で見た。
あれ、ブレスレットにリングがついていない.......
頬杖をついている手首、
ブレスレットはついているけど、リングが......
「あっ」
思わず声を出してしまって、吉井くんがこっちを向いた。
私は口元に拳を当てた。
机の上にある吉井くんの右手の薬指に、
リングが.......
どうして.......
これって、お兄さんの形見だよね。
どうして、薬指に.......