いつまでも涙がおさまらなくて、
しばらくその場から動けなくなってしまった。
5時間目が始まるチャイムが鳴り終わると、
キュッキュッキュッと、走って近づいてくる上履きの音がして、
両手から顔を出した。
「大丈夫か?」
そう言って私の前にしゃがみこんできたのは、
吉井くんじゃなくて、
海くんだった。
「海くん......」
海くんは、私のリュックを持っていて、
自分のリュックを背負っていた。
海くんは、私のリュックをそっと私の前に置くと、
顔を覗き込んできた。
「なんでここ来たかわかる?」
そうだよ、どうして海くんがここに.......
私は小さく首を振った。
「吉井が俺のとこに来て、
宇崎が体育館で泣いてるから、行ってやってって、
これ、
宇崎のリュックを持ってきたんだよ。
宇崎、昼飯食ってないからって」
「吉井くんが.......?」
海くんは優しく微笑みながら頷いた。
「宇崎が吉井を好きになるの、わかった気がしたよ」
海くん......
「海くん、私......振られちゃった」
海くんは、小さく何度も頷いた。
「ちゃんと気持ち伝えた?」
「うん。
幼なじみの子が好きなんだって。
俺のこと忘れてだって」
海くんは、また何度も頷いて聞いてくれた。
「どうやったら、忘れられるんだろう......」
海くんは、少し首を傾げて、
また顔を覗き込んできた。
「あのさ、
俺のとこに来た吉井.......
あれ、泣いた後だと思うよ?
目も鼻も真っ赤にして......
どうして吉井は、宇崎を振ったのに、
あんなに目が真っ赤になるほど、泣いたんだろうな......」