君の『好き』【完】





目をこするのをやめて顔を上げると、


海くんが心配そうに私の顔を覗き込んでいた。



「ありがと、海くん」





私がそう言うと、海くんは優しく微笑んだ。




「なんにもしてないよ」



私は首を振った。




「気にかけてくれるだけで嬉しい。




ごめん、いきなり泣いちゃって......








そういえば、最近全然会わなかったね海くんと。




同じ高校通っているのに」





入学してから少しだけ一緒に登校したけど、


海くんが部活に入ってから、時間が合わなくなった。








「俺はしょっちゅう、宇崎見かけてたけどな」




あはははっと、海くんは笑った。




「え?ほんと?なんで声かけてくれなかったの???」





「なんでって.....なんか宇崎楽しそうだったから」




楽しそう?私?





「宇崎が楽しそうにしてんなら、別にいっかって。



だから、今日は元気ないから......声かけました」





ははっと笑いながら、


海くんは足を前に投げ出して、ベンチの背にもたれた。



そしたら海くんの栗色の髪が、陽にあたって、



明るくきらきらと輝いた。




柔らかく外ハネしている海くんの髪は、


とても綺麗な色だと思った。





「海くんは優しいね」