頭をぽんぽんと撫でながら、
顔を覗き込んできた吉井くんは、
ははっと目の前で笑い出した。
吉井くんって、くしゃって笑うんだな......
はっ、そんなことはどうでもいい。
「ちっちゃくないです。
吉井くんがデカすぎるんでしょ!」
初めてしゃべったのに、超感じ悪い奴だな!
ちょっとムカついていたら、
「そんぐらいが、かわいいじゃん」って、
吉井くんは私の頭から手を離した。
か、かわいい.......
そんなこと言われたの初めてだから、
一瞬固まってしまった。
吉井くんは、何事もなかったかのように、
すぐ後ろのロッカーの上から、大きな白いエナメルバッグを持って、
机の上にドサッと置いた。
バッグに書いてある英語を見て驚いた。
バスケットボール.......
「吉井くん、バスケ部なの?」
「そうだよ」
そう言って、吉井くんは席に着いた。
吉井くんは長袖のワイシャツの袖をまくっていて、
左腕には、2連の黒いブレスレット。
そこには、指輪がぶら下がっていた。
真面目そうな容姿に、そこだけチャラくて、
なんだか違和感を感じた。
あ……きっと彼女がいるんだ......
あれ、なんでちょっとショック受けてんだろう。
なんか、変な気持ちになりながら、
私も帰りの準備をし始めた。