体育館の手前で、沙希にそう言って立ち止まった。
「どうした?なんかあった?鈴?」
沙希は私の前に立って、
下を向いていた私の顔を覗き込んできた。
「私もう風間先輩のこと、見たいと思わなくなっちゃった」
「マジで?やっと諦めた?」
「諦めたっていうか、まぁ......」
沙希は私の肩を優しく叩いた。
「今度さ、私の彼氏の友達を紹介するよ。
鈴かわいいから、すぐ彼氏できるって。
じゃあさ、先に帰んなよ。
私は図書室で時間潰すからさ」
沙希は体育館から、校舎の方へと歩き出した。
「沙希、いいよ紹介しなくて」
沙希の隣に行って一緒に校舎へと歩きながら、
そう言うと、
「どうして?」と沙希は首を傾げた。
「私、好きな人できたっぽいから」
沙希がピタッと立ち止まったから、
私も立ち止まった。
「うっそ、誰?いつの間に彼氏できたの?」
「違う違う。
彼氏じゃないよ。
片思い.....だよ」
「誰に?」
「えっと、その.......
隣の席の、吉井くん」
「マジか」
沙希はパシッと私の手首を掴んで、
また体育館の方へと私を引っ張って歩き出した。