君の『好き』【完】





全ての試合が終了し、

閉会式も終わると、


海くんは応援席で制服に着替え、

防具袋と竹刀袋を肩にかけて、会場から外に出ていった。



私はそれを見届けると、すぐそばの出口から出て、


海くんの出た方へと走った。





ぞろぞろと、同じような防具袋と竹刀袋を肩にかけている人がたくさん歩いていて、


すみません、すみませんと、謝りながら海くんを探した。




それでも見つからなくて、


外の長い階段に出た。




すると海くんの後ろ姿が見えて、



急いで駆け下り、海くんの腕を掴んだ。



「えっ、宇崎???」




海くんは目をまん丸にして立ち止まった。




「渡瀬~、俺ら先帰るな~」



ほかの部員たちがニヤニヤしながら私たちを通り過ぎていった。




「あぁ、うん。わかった」



海くんは下を向いた。




「海くん私、海くんが好き!



海くんがもう私を好きじゃなくても、私は海くんが好き!



好きだけじゃ足りないぐらい、本当に.....海くんが大好き!!」



どうしてもこの気持ちを早く伝えたくて、

いきなりだけど、海くんに叫んだ。






「ちょっ、ちょっと待って、何言い出すんだよ......」



海くんは下を向いたまま手の甲を口元に当てた。




「大好き!海くんのことが好きで好きでどうしようもないぐらい大好きなの!!」


周りの視線を感じるけど、今はそんな事はどうでもいい。


「ほんとちょっと待てって......なんなんだよ」



海くんは私の手首をガシッと掴むと、


また階段を上り始めた。




そしてまた武道館の中に入り、


ホールの奥にあるベンチまで来て、私を座らせた。



海くんはドサッと防具袋を床に置き、竹刀袋を立てかけると、少し間を空けて私の隣に座ってきた。



「来んなって言ったじゃん」