君の『好き』【完】






私は吉井くんの足を持ち上げると、椅子に座って私の膝の上にその足を乗せた。


そしてもう一度包帯を外して、また巻き直した。



「なんでできんの?」



吉井くんの顔を見ると、吉井くんは首を傾げて笑っていた。



「なんでって......適当」



巻き方はよくわかんないけど、なんとなく巻いていると、


くくくくっと笑い声がして、顔を上げた。




「適当かよ!頼むよ鈴」




はははっと笑っている吉井くんの笑顔の後ろに目をやると、


廊下に海くんの姿が見えた。




「海くん」



包帯を巻く手を止めて吉井くんの足を下ろそうとしたら、ガシっと腕を掴まれた。




「まだ、途中だろ。行くなよ」




吉井くん......



吉井くんはまっすぐ私を見つめていた。



そうだよね、途中だと困るよね。




私は少し急いで包帯の続きを巻き始めた。


そしてフックで止めて、その上にテープを貼りなおすと、


ゆっくりと吉井くんの足を下ろした。



「ありがとな、鈴」




すぐに廊下に行こうと立ち上がったら、



もう、廊下に海くんの姿はなかった。