海くんはベンチの背に持たれたまま、私を見て優しく微笑んだ。
「言ってやんなきゃ気づかない事もあるけど、
どうして気づかないのか、
その人の心の中も、考えてやらないとな」
海くんの言葉を聞いて気づいた。
私は自分のことしか考えてない事
海くんの心の広さ
ベンチの背に持たれて、遠くの空を眺めている海くんの横顔を見て、
言葉では言い表せないような感情が湧き出てきた。
心があらわれるような……
心の奥深くを、動かされたような……
少し間隔を空けて座っているベンチ。
私は海くんの膝に手を伸ばして、その上にあった海くんの手をぎゅっと握りしめた。
「ん?どした?」
海くんは、ベンチの背から体を起こして私の顔を見た。
私の手と海くんの手。
重なり合った手を見つめていたら、ただそれだけなのに、なぜか泣きたくなった。
いつまでも下を向いて泣いている私に、
海くんは何も言わず、ただ手をぎゅっと握り締めてくれていた。



