少しだけ隙間の開いているカーテン。
「おいで」
その隙間から海くんが呼ぶから、カーテンに近づき、
そっと中に入った。
海くんはベッド脇の丸椅子に座って、
棚に救急箱を置いた。
「見してみ」
そう言ってベッドをぽんぽんと叩いた。
海くんに言われるがままに、ベッドに乗っかり、
足を伸ばして座って膝を見せた。
「痛い?」
横から首を傾げて、私の顔を覗き込んできた海くんの眼差しが、
とても優しくて......
「大丈夫」
私の答えに、海くんは目を細めて救急箱の中を開けた。
この優しい眼差しが私に向けられるのが最後なんだって思ったら、
胸が痛くて、苦しくて.......
「どうした?」
消毒の綿をピンセットでつまんだ海くんが、
また首を傾げた。
私は、泣いていた。
「最後なんて、言わないで.....」
海くんは、あはははっと笑って目をそらした。
「最後にしないと、吉井に悪いだろ。
ちょっと染みるかも、ごめんな」
海くんは膝の傷に綿を優しく当てた。
「大丈夫か?」
私は首を振って、海くんの腕を掴んだ。
「吉井くんのことは、もういいの。
私、海くんを大切にしたい」
海くんは私の腕を少し引っ張って、自分から離した。
「とにかく、ちゃんと吉井と話したほうがいい。
このまま何も話さないのはよくない。
宇崎のためにも、
吉井のためにも、
俺のためにも......
ちゃんと正直な自分の気持ち、話してこいよ」