話す......




「吉井くん、私......海くんを追いかけたい」



「鈴.......」






吉井くんは一度掴んだ腕をぎゅっとしてから、



そっと腕を離した。




私はすぐ向きを変えて、校庭の方へと海くんを追いかけた。





海くん


海くん......


頭の中は海くんのことでいっぱいで、


校庭を見渡すと、校庭の隅で友達と体育座りしている海くんが見えた。





「海くん......」





海くんのところまで走ろうとしたら、


小さな段差につまずいで、地面に座り込んでしまった。




なんで、こんな時に.......



私はすぐに立ち上がって、両手の砂をぱんぱんと払うと、


海くんのところまで、また走った。




「海くん!!!」




海くんの前に立って、大きな声で海くんを呼ぶと、


海くんと両隣の友達が一緒に私を見上げた。





「え、う......宇崎......え?」



「え?じゃない!!!」




海くんはゆっくりと立ち上がった。





「なんで、来たんだよ......


ていうか、なんでこんな砂だらけなんだよ」




海くんが私のジャージのズボンについた砂を、


パンパンとはらった。



「痛っ、痛い」




膝が傷んで、嫌な予感がしてジャージの裾をめくると、


膝から結構な血が出ているのが見えた。





「うわっ、なんだよ、こけたの?」



「う.....うん」



「吉井は?」




「吉井くんとは私.....何も話すことなんかない」



唇を噛み締めて俯くと、



海くんは私に一歩近づいた。




「だめじゃん、ちゃんと話さないと。


後悔するぞ」





後悔......



「海くんを追いかけない方が、私は後悔する」




海くんはため息をついた。






「罪悪感なんて持たなくていいんだよ」



えっ......



「俺のことは、気にすんなって」





罪 悪 感......





海くんは私に背中を向けてしゃがみこんだ。



「乗りな、保健室行くから」



「おんぶなんて.....大丈夫だよ、一人で歩けるから」




海くんは振り返って、私を見上げた。



「乗ってくんないと、俺超かっこ悪いんだけど」




ははっと笑ってまた前を向いた。





海くんの言葉に甘えて、背中に乗ると、


海くんがゆっくりと立ち上がった。





海くんの首元にしがみつくと、


海くんの息遣いが聞こえて、



もっと華奢だと思っていた海くんの背中は、


とても大きく感じた。



「俺が宇崎を助けんのは、これで最後にするから。



もうこれからは、吉井に助けてもらえよ」




目の前すぐの海くんの口からそんな言葉が聞こえて、



背中にしがみつきながら、胸がちくっと痛んだ。




これで最後......