御劔 光の風3

「お前はこっち。」

千羅が手首を返したと同時に地面が割れて、ラスを捉えようと生き物の様にうねり始めた。

咄嗟に跳ぶことで逃れられたが上空には既にそれを見越して動いていた千羅が待ち構えている。

罠か。

そう気付いた時にはラスは地面に叩きつけられ、逃れた筈の魔法に捕らわれてしまった。

「こそこそと動いていた割には手ごたえの無い奴だな。」

千羅の温度を感じさせない声が響くとラスの身体は鈍い音と共に斬り刻まれてしまう。

一つの命を終わらせるにしては実にむごい音だ。

「…向こうが頭だってことか。」

視線の先にいるサルスの姿にまだ見ぬ魔物の影を感じて目を細める。

「そうでもないぜ?」

囁くような声が耳に触れた途端、千羅の全身に衝撃が走りその場に崩れ落ちてしまった。

痺れを感じながらも懸命に頭を起こせば、そこには倒したと思っていたラスが不適な笑みを浮かべて見下ろしている。

「甘く見すぎたか?」

「…その様だな。」

よくよく見ればラスの右腕が植物の根のようにいくつも分かれていた。

いや、手だけではない。

おそらくラスは植物系の魔物だろう、千羅の攻撃を受けたさいに身体を分散させて衝撃を軽減させたのだ。

確かに甘く見すぎたと認めざるを得ない。

しかしだからと言ってそれで終わるわけにもいかないのだ。

「油断したか。」

一時前の自分に舌打ちをすればもう気持ちは後ろを向かないのが鉄則。

身体を分散させる事が出来るのであれば核となる心臓部分を的確に狙って仕留めなければならない。

その見極めが必要だと千羅はすぐさま飛び上がり剣を構えた。