御劔 光の風3

目を閉じずともあの頃の記憶を呼び起こすのは容易いことだ。

目の前にあった背中であり、目指すものであり、盾であるものを一瞬にして失くしてしまったあの頃。

守ってくれていたものが失われ全てが槍の様に向かってくる感覚に陥り混乱ばかりしていたあの頃だ。

「俺が王位を継いだとき…サルスパペルトに継がせるべきだという声が少なくなかったこと、知らなくはないだろう。それは年齢だけでなくその資質を皆が見抜いていた。」

ただ自分が王位第一継承者であった、それだけの話だと何度も思った。

「俺はほんの一時その位を預かったに過ぎない。サルスパペルトこそがこの国の求める統率者だ。ここで倒れるべき人物ではない。」

だから、その思いを胸に秘めてこの言葉を続ける。

「いま助ける。」

「…一思いに殺してくれるということか。」

ラスの言葉にサルスは目を細めて口元に力を入れた。

本当にカルサはそう考えているのか。そう探っていたその瞬間、カルサは踏み出し王の椅子を手に入れたと構える二人に斬りかかった。

速い。

遠慮のない攻撃は迷いもなく目前まで突き進み、空気をも裂くように剣圧が大気を揺るがした。

素早く避けた二人は鋭く光るカルサの目に捕らわれる。

強い力を宿したままの黄金の双眼、追うのは勿論一人だけだ。

「本気じゃねえか。」

予想外の展開か、苦笑いを浮かべるラスに同調しサルスもほんの僅かだが崩さなかった表情を歪めた。

尚もカルサは狙いを定めて踏み込もうとする。

言うまでもない、狙いはサルスだけだ。

無視をされた苛立ちか、直向きなカルサのその後ろ姿に攻撃をしかけようとするラスを妨げたのは傍観していた千羅だった。

忘れていた、そういえばもう1人いたのだと舌打ちをする。