御劔 光の風3

まるで寄り添うような風に包まれると沙更陣は膝から崩れ落ちて頭を抱えてしまう。

一体何があったというのだ。

処理できないくらいの記憶が次々と蓋を開けて飛び出してくる。

知らない出来事の筈だ、しかし心が疼いてしかたがない。

「頭の中にあった記憶が整理されていくのかな…不思議な感覚を味わっていたその時気が付いたんだ。僕は記憶を消されていたんだって。」

カルサの目が大きく開いた。

「消されていた?」

沙更陣の言葉が頭の中で繰り返される。

いつから、どの位、そんな疑問も浮かばない程に知らされる事実を受けとめる事で精一杯だった。

「環明の声も記憶が戻って初めて誰か分かったくらいだ。ロワーヌの事も、ウレイもヴィアルアイも…僕にあった記憶は。」

感情が昂り過ぎたせいか沙更陣は言葉をつまらせる。

額に何度も拳をぶつけては歯を食い縛るように口元にも力が入っていた。

「玲蘭華が統治する御劔の総本山、ここで守麗王である彼女の側近である自分だった。…その事に何の疑いもなかったよ。」

沙更陣から震える息が聞こえる。

「気付いた時から僕は側近で、どれくらいの時間を過ごしたかも分からない。最初は混乱して、嘆き、玲蘭華に怒りを覚えた。」

そんな時に耳に響いたのはさっきの環明の言葉だった。

大切なロワーヌとの子供、あの子は無事であるということが嬉しくて切なくて涙が流れた。

いつか会えるかもしれない、その小さな希望が全ての感情を抱きこんで心をあたたかにしてくれる。

「名前はセリナだと、女の子であると環明が教えてくれた…その言葉だけが僕の救い。僕の生きる支えになったよ。」