御劔 光の風3

沙更陣は身を縮めるようにして震える息を吐いている。ふつふつと沸き上がり続ける強い怒りを爆発させないように抑えているようでその危なげな姿は見ていられなかった。

沙更陣がここまでの状態になるのは余程の事があったのだとこの先の話に息を飲んだ。

「沙更陣、頼む。教えてくれ。」

触れてはいけないものに触れているようで緊張感が高まる。それでもカルサは全てを知っておかないといけない気がしていた。

太古の因縁を終わらせる為には全てを清算しないといけないのだ、その役目は自分にあると考えている。

沙更陣の思いや苦悩でさえも背負わなければいけないと思ってしまうのだ。

やがて沙更陣は震える息を長く吐いたかとおもうとその重たい口を開いた。

「ロワーヌの中に私たちの子供がいる事は知っていた。…嬉しかったよ。あの時芽生えたばかりの小さな命の存在はまだ環明にしか伝えていなかったんだ。」

かつてロワーヌと環明は仲が良く、親友のような関係だったことをカルサは思い出す。

あの頃、魔族を代表してオフカルスの神官になったロワーヌは当初忌み嫌われる存在でもあった。そもそもこの光溢れるオフカルスの中で闇の属性というのは異質過ぎたのだ。

光を嫌い闇を好む魔族たちが住む場所はオフカルスとは反対で世界に闇をもたらす中心世界だった。

レテイシア、それは光の世界の住人にとって不思議過ぎる場所。誰も訪れたことも無ければそれに関する文献も僅かにしかない。

ある情報は魔族と魔物が住む闇を統べる世界であるという事。

ロワーヌは初めて魔族を代表としてオフカルスに来た神官だった。

自身を闇に包むように漆黒の陰を生み出す傘を差し、時として彼女の輪郭でさえも分からなくなるほどの深い闇は人々に恐怖を与えたのだ。

加えて闇の中で妖しく光る眼の色が彼女がいかに異質であるかを物語っていた。

しかし十二人の神官たち、特に環明はロワーヌが魔族であることを気にせず誰とでも接するようにしていた覚えがある。