御劔 光の風3

「あれがリュナの本来の力。では元々に風の力の素質があったのか?」

「そうかもしれないね。もしくは違う属性と共存していたが魔族の血が目覚めたと同時に風の力に塗り替えられたか、だ。」

かつてカルサの脳裏に浮かぶリュナの姿はいつも光の中で笑っているものだった。しかし今では闇夜の下、妖しくその目を光らせる彼女の姿も垣間見える。

あの細い身体の中にはいくつもの戦いがあったという事だ。

それを本人でさえも知らなかった。では一体誰が全てを知っていたというのだ。

風が静かに吹き抜け度にその思いは募る。

ここまで聞いて分かったことと分からないことがあった。

視線を庭の方へ外せば穏やかな風景が広がっている、かつてこの国は人の賑わいに加えて水や風や木々に囲まれた豊かな国だった。

自然の力を司る神官と彼らを束ねる守麗王がいた時代、ここはもっと賑やかで華やかな世界だったのだ。

神官だった沙更陣とロワーヌの間に生まれたセリナは本来ここで沢山の人に祝福されていた筈なのにカルサはセリナの存在を知らない。

これも玲蘭華の記憶操作なのだろうか。しかしそれでは説明がつかないような気がする。

「何故…俺はセリナを知らないんだ?」

「知らなくて当然なんだ。あの事件が起こった時はまだセリナは生まれていなかった。」

そう答えると沙更陣は額に手を当て歯を食い縛った。

カルサの思考が止まるくらい沙更陣のその姿は珍しい。悔しい気持ちを抑えるというよりは、怒りを堪えているように見える。

いつも穏やかな沙更陣は滅多にその笑みを崩すことは無かった。そんな彼が怒りに震えているなんて予想もしない。

「…何があった?」

渇ききった喉では声を絞りだすのが精一杯だった。