御劔 光の風3

次第に切なさが込み上げてきた。沙更陣は思いを口にしようとした時、傘を持つロワーヌの手が微かに震えている事に気付く。

「…そんなに辛いのか?」

胸に留めることが出来ずに出てしまった沙更陣の言葉にロワーヌの手が僅かに反応を示して動いた。

「…少し、ね。」

言いにくそうに少し間を空けてから答えるその姿が余計に沙更陣の感情をかき回していく。

何故だという思いと自分ではどうしようもない無力さばかりが募って狂いそうだ。

「ロワーヌ、もう止めよう。こんな争い…止めにしよう。」

その言葉の意味を悟ったロワーヌは目を細めて心を凍らせていく。また元の様になれないか、そう続けて言われた事に鼻で笑ってしまうのも仕方がないことだった。

「元の様に?止めて何かが前に進む?」

それは感情の揺さぶりだろうか、それとも身体の限界だろうか分からないがロワーヌの手は震えが増している。

見ていられない気持ちが先走って逃げ道を探すように放った沙更陣の言葉はもはや絵空事だ。そんなことは口にした人物の満足しか得られないだろう。

「意味の無いことはしない。」

強く言い切るロワーヌのその姿勢に沙更陣は己の甘さを痛感せざるを得ない。

その射抜くような眼差しは怒りからか静かに揺らめく炎の様に生命力を持っていた。

「この国は光が強すぎて痛い…前もこうだったか思い出せないけどね。」

ロワーヌのもつその過去を振り返る時の彷徨う感じは沙更陣の中にも確かにある感覚だ、いま二人が分かち合えるとしたらそれだけしかないのかもしれない。

考えるだけで暴れそうになる感情を抑えるのは容易くなかった。

どれだけ拳を握っても、どれだけ強く足を地に擦り付けていても、堪えきれない感情が涙となって目に浮かぶ。

気が付けば沙更陣は自分の外陰の裾を広げ、自らを盾にするようにしてロワーヌに覆いかぶさった。