御劔 光の風3

「ナル、いないのか?」

いつものナルの部屋を叩いても返事がない。サルスは待ちきれずに部屋の扉を開けて中を覗いた。

部屋の中を入ってみてもやはり部屋の主であるナルの姿は無い。しかし勢いよく訪れてしまった以上、出直す気分にもなれなかった。

「そうだ!隠れて驚かしてやろう!」

久しぶりに子供らしい感覚が戻った自分に嬉しくなる。

いつも穏やかに笑うナルをたまには驚かせてみたい、そんな悪戯心からサルスは部屋の中で隠れて待つことにしたのだ。ナルの部屋は三つに分かれている、サルスが今いる場所は応接にあたる場所で一番広く設けられた場所だった。その奥にあるのが同じ空間にあるにもかかわらず別の部屋として壁も無く設けられた空間が占いを行う場所。

サルスは扉を越えて奥にある私室と化された部屋に忍び込んだ。

あまり訪れたことのないこの部屋は少し新鮮でおもしろい。そして安らげる空間でもあった。一応隠れるように扉の死角になる場所で小さく座る。

「静かだな。」

ハーブへの贈り物を考えすぎて昨夜はろくに寝ていない。そうでなくても日々の心労がたたって次第に眠気が襲ってきたサルスはそのまま眠ってしまったのだ。

次に目覚めたのは緊迫した会話が近付いてきた時だった。

「落ち着いてカルサ、一体どうしたというの?」

「だから、ナルは全て知ってたのかって聞いているんだよ!」

扉の奥の方でナルとカルサの声がする。その声に目を覚まし、サルスは静かに意識を戻していった。

「とにかく、部屋に入りなさい。」

そして扉が開く音がして二人が部屋に入ってきたことに気付く。しかし奥の部屋にいるサルスはまだ扉を隔てた音しか聞こえていなかった。

「廊下で取り乱すなんて貴方らしくもない。そんなに息を切らして…何があったの?」

「…日に日に頭の中の記憶が増えていく。」

「記憶が増える?」

「…っ疲れているからだと思ってたけどそうじゃない!鮮明に感じるんだよ!」

「カルサ!」