御劔 光の風3

「でも、話自体は初耳だったにしても大方の予想は付いていたみたいだ。カルサが出ていく事も、俺たちがここにいることも。薄々感じながらも話してくれる日を待ってたみたいだった。」

「…そうか。」

「大きな愛情を感じたよ。」

貴未の言葉に千羅は何も答えることが出来ず言葉を詰まらせる。時折対立する二人を今まで陰からずっと見ていただけにハワードの気持ちが深すぎて言葉に出来なかった。

容易い相槌でさえもうつのを躊躇わせる程、その思いは千羅を揺さぶる。

千羅がカルサと出会う前から、おそらくはカルサの父であったデルクイヤが即位する前からずっと守り続けていたのだろう。言えない苦しさを今まで考えたことは無かったが、この状況になって心にくるものがある。

どれだけの懐の深さでカルサを見守ってきてくれたのだろうか。

それは同じ様にして支えてきてくれたナルとは大きさが違う様な気がした。

ナルは全てを知っている。知った上で支えてきた者と、知らずに察した上で支えてきてくれた者とでは全く心の使い方が違うのだ。

「ハワード様はずっと皇子を支えて下さっていた。」

その思いに敬意を示す千羅がそこにいる。

「これからは俺たちが全面的に支えていかなければならない。」

貴未が頷く。千羅と貴未、二人はカルサに向けられていた視線をお互いに向けた。

「頼りにしてもいいか?貴未。」

「もちろん。」

自然と出た言葉に揺るぎない意志を感じる。共に立ち向かうと決めたのだ、今更離れるなんて最初から考えられなかった。

互いの過去を暴いてみても何の意味もない、本質はとうに知り尽くしていた。

「あとは、この国でどう幕を降ろすかだ。」

その言葉の意味はとても深く、重いものだった。

もう帰ることはない。

この国とはこれきり、今生の別れになることは明白だ。

千羅の声が何度も胸の中で反響する中、貴未はさっき真実を告げたばかりのハワードへ想いを馳せた。

最後に顔を見せてくれと言った、彼の意向はまだ見えない。