御劔 光の風3

「現にロワーヌが関わっている以上、その可能性の方が…。」

「敵でも何でもいいじゃないですか!」

言葉を被せて千羅は訴えた。カルサは誘導されるようにゆっくりと千羅の方へ振り向いて顔を合わせる。どうしてか千羅の目は悲痛の色を帯びていた。

「千羅?」

「騙されたのなら騙し返して手に入れたらいい。でも私はあの子が嘘をついたとは思えません。だから追い求めてもいいんですよ。」

千羅の熱の入り具合にカルサは目を細めて探るように見つめる。

「最近の皇子は手放す事しかしていません。何か希望を手にされてもいいのではありませんか?」

切なげな表情で訴える千羅に自身を振り返る。確かに譲り渡すことや諦めることしか考えていない日々が続いていた。手の内で色んな物が崩れ落ちていく。箱を開けては崩れ、目の前を遮る布を捲っては闇に飲まれていくような感覚に疲れていた。

そう、疲れていた。

「リュナが希望の光か。」

開いては閉じる真実の扉にカルサは翻弄されつつあった。自分の記憶が本当に自分の物か、それとも作られたものかも分からなくなりそうだ。

リュナを信じたい、しかし自信がない。

「約束したでしょう?彼女の進む道を作っていくと。リュナは皇子を信じて、この国を守る為に敵陣へ向かった。信じてみる価値はある筈です。…信じなくてはいけない筈ですよ。」

あの時のカルサの決意はまだ自分の中にあることを自身で感じている。

手を取ってその道を歩いていくのだと決めた矢先に彼女は手を離して消えてしまった。そして自分の存在の意味を周りに知られることになり不安になってしまった。

「何を見失っているのですか。」

まずは自分という舵を取れ。目指す灯台がまやかしでも光があるなら進む事が出来る筈だと教えられている。風は向かい風か追い風か、どちらにしても船は進むから。

船を進める風をリュナが作るのならば、カルサは行先を示す光にならなくてはいけない。