御劔 光の風3

低くなった声にカルサの気持ちが反映されている。本当なら知らなくていい事、カルサにしてみれば知られたくない事だった。自分の力や使命を知られる事は、すなわち自分の生きる意味を問われる事に繋がる。

何故、生きていられるのか。そう直接問いただされるのが恐かった。自分が嫌になる瞬間の一つだ。

「ハワード様も粘りましたね。皇子も見習わなければ。」

「見習うのか?」

「尾を引くのと粘るでは訳が違いますから。皇子も粘らないと。」

想像するだけで呆れてくる。確かにハワードの頑固さ、粘り強さは周りのお墨付きだ。少しうっとうしさも感じながらカルサは頭の片隅に千羅の助言を残そうとする。

粘り強さを見習うということはつまり粘らなくてはいけないということだ。何に対しての執着を見せればいいのかカルサには分からず考えてしまう。

「リュナを諦めてはいけませんよ。」

まるで答えを差し出すように放たれた千羅の言葉でカルサの足が止まった。

「皇子の考えていることは大方想像がつきます。どういう経緯でそうなったかはまだ謎ですがおそらく正解なんでしょう。それに分かっていることはリュナが魔物であるということです。事実は変えられない。」

誰もいない広い廊下に千羅の声が重みを付けて落ちていく。分かっていても心にのしかかる何かは振り払えなくていっそのこと心を手放した方が早い気がした。

でもそれも出来ないカルサは向き合うことしか出来ない。

「経緯がどうであれ、あの子の心は本物です。皇子を心の底から思っていました。少なくとも私はそう感じています。」

最後にあの柔らかい声で名前を呼ばれたのはいつだったか。

脳裏にいくつもの景色が浮かび、そのどれにもリュナは存在していた。誘惑の煙にまやかしを見せられているように頭がくらくらする。

「彼女の心を肌で心で感じているのは皇子ご自身です。迷わないで、余計な考えは捨てて下さい。」

手に絡み付くような感覚。この腕の中に軽やかに彼女はいた。

好きだと、力になりたいとしきりに訴えていたリュナの心に動かされて今の自分がいることも分かっているのに。

「しかし、あいつの正体が分からない。魔物ならば奴らの差し金かもしれない。」

「そうじゃないかもしれません。」