御劔 光の風3

「サルスの出方を見る。会議に出席するぞ。俺はこの国で出来る最後の仕事をする。」

「皇子。」

一歩足を踏み出すには丁度いい台詞だった。しかしどこか心許ない姿に声をかけずにはいられない。彼を小さく呼べば消えそうな微笑みで答えた。

「後でな。」

その場から立ち去ろうとするカルサの腕を咄嗟に掴んだ。

「…千羅?」

全てに押し潰されてしまいそうな、今のカルサはとても儚く感じる。消えてしまいそうな不安にかられ、カルサを掴む手により一層力が入った。

「どうした?」

「私も行きます。」

千羅の厳しい表情にカルサは驚きを隠せなかったがその言葉の意味をすぐに理解する。そして呆れたように息を吐くと居心地悪そうに眉を寄せた。

「心配しなくとも体調は管理している。もう少ししたら休むから。」

「ならば、いいのですが。」

千羅は掴んでいた腕をゆっくり離し、渋々といった表情を見せる。

「まったく、お前は本当に過保護だな。」

千羅の気持ちが心地よいのだろう、カルサは穏やかに笑い歩きだした。もちろん千羅も後に続く。

前を歩くカルサが微かだが笑っているのを感じる。しかし千羅は厳しい表情のままだった。その理由はカルサの体調を心配しているだけではない。

不安の渦が心の中で生まれ、消化できない大きさにたまらず彼女の名を呼んだ。

瑛琳。

「貴未は今、ハワードの所にいる。」

何の脈略もなく話し始めたカルサの声に意識を戻され千羅は答えた。

「老大臣の所ですか。」

「知らなくてもいい事を聞いている頃だろう。」