御劔 光の風3

「本当にいいのでしょうか?…あの頃の…約束をしたあの時の私に戻っていいのでしょうか?!」

ナルの身体が小さく震えている、ハワードにも伝わる彼女の心の揺れが胸を締め付けた。やはりそうだ、思った通りだ。ナルはあの日から今までも、ずっと自由を奪われ苦しみ続けていた。

「勿論だ。私はその為に来た。…そう願っているんだ、ナル。」

首飾りに触れて微かな金属音を響かせる。ナルに自分の気持ちを受け止めて欲しくてハワードも必死だった。

どうか彼女に自由を。

「もう、一人じゃない。」

ハワードの言葉をきっかけにナルは勢いを付けて彼の首に腕を絡ませ抱きついた。ハワードの顔にナルの柔らかな髪が触れる、彼女の匂いに包まれていることに気が付くまで少しかかった位に不意を突かれたのだ。

離れまいと、失った何かを埋めるように強い力で引き寄せるナルは声を震わせていた。

「ずっと…ずっと思っていました。会いたかったんです!貴方を好きだと伝えたかった!」

「…ああ。」

「二人で出かける日を楽しみにしていました。何度もここから抜け出そうと考えたんです。どうしても一目会いたくて…会いたくて…。」

「ナル。」

「せめて…さよならだけでも伝えたいって…!」

ナルの手が緩み力なくハワードの腕をなぞって下りていく。この十数年のナルの覚悟を聞いた気がしてハワードの目からも涙がこぼれた。

「私はここにいる。ここにいるんだ、ナル。」

ナルの頬を両手で包んで目を合わせる。ハワードの言葉を受け入れた、ナルの目を見るだけでハワードにはそれが分かった。

そして、どちらからでもなく二人は口付けを交わす。

触れる程度に、やがてそれは熱を持って深く互いの感情を解け合わせるように時間をかけてかわされた。出来る筈もないと分かっていて十数年を埋めようと必死になっているようにも感じる。

二人の未来は確かにあった。

互いに手と手を取り合って寄り添っていく未来は作れるものだったのだ。

呼吸をする為か二人は少しの距離をとった。額を合わせて乱れた呼吸を取り戻す。目の前にはもう愛しい人の姿しか映ってはいない、そのことが二人をさらに突き上げた。

やがてナルの身体が揺れハワードが彼女に被さるようにして沈んでいく。

愛しいと、声にすることがこんなにも満たすものだなんて知らなかった。