そう言ったナルから零れた涙は今までの物とは違う、嬉しさからくるものだとハワードには分かった。幸せそうにはにかむ笑顔は心からのものだろう。この姿をあの時見たかった、そう考えるだけで煮えたぎる思いはやはり簡単に消えてくれそうにない。
あの后のことはこの先自分がどれだけ年を取っても許すことはないだろうと悟っていた。
貪欲に出世を求め、確かな地位を得る為にがむしゃらに走り続けたこの十数年。ようやく王子の世話役というところまで登りつめることが出来た。
あの后の息子、周りの評価は悪くないがそれも本当かどうか分かったものじゃない。この国の未来の為にも、何より自分の中の消えない恨みの為にも王子を后の様な人間にしてはいけないと思っていた。
どうやらその考えを持つ人間は他にも沢山いたらしい。
あとから加わった王子の世話役に就いた時ハワードは驚いたのだ。王子の周りには既に四人の世話役が居た、皆貴族や優秀な人材だと高評価の人物ばかりだったのだ。何よりも対象となる王子の人柄に驚かされた。
噂通りに素晴らしい人物、彼には国王の様なひ弱さも后の様な傲慢さも無かった。それは今までの世話役が必死になって彼を育ててきたからだとすぐに分かる。何故そんな中に自分が選ばれたのか不思議でならなかった。
自分はそんなに優秀ではない、ただがむしゃらに走ってきた勢いだけの人間だとハワード自身が自覚していたのだ。
既に満たされた状態の世話役に新たに加えられたハワード、その理由を教えてくれたのはデルクイヤだった。そんなことをナルの髪をなでながら思い出す。
「…私はがむしゃらに貴女を求めてここまで来た。辿り着いた時、貴女をさらって逃げるつもりでずっと走ってきた。」
「…ハワードさん。」
「でも、その考えは改めたよ。デルクイヤ様に教えられた。この国のこれからは決して悪いものにはならないのだと。」
それを担っていく私を助けてくれ。そう言われた時のことを思い出してハワードは目を細めた。
「私の執念を意志の強さだと評価してくれたあのお方の器の大きさには敵わない。でもそうして私は今の地位を得ることが出来た…ナル、君と少しは肩を並べられる近さに来れた。もう遠くで見つめるだけの日々は過ぎたんだ。」
「ずっと…私のことを?」
「ああ見ていた。」
十数年、自分の気持ちに蓋をし続けたナルとは違いハワードはその心に素直にナルを求めていた。それはとても嬉しいことなのだけれども、次第にナルは表情を曇らせていく。
あの后のことはこの先自分がどれだけ年を取っても許すことはないだろうと悟っていた。
貪欲に出世を求め、確かな地位を得る為にがむしゃらに走り続けたこの十数年。ようやく王子の世話役というところまで登りつめることが出来た。
あの后の息子、周りの評価は悪くないがそれも本当かどうか分かったものじゃない。この国の未来の為にも、何より自分の中の消えない恨みの為にも王子を后の様な人間にしてはいけないと思っていた。
どうやらその考えを持つ人間は他にも沢山いたらしい。
あとから加わった王子の世話役に就いた時ハワードは驚いたのだ。王子の周りには既に四人の世話役が居た、皆貴族や優秀な人材だと高評価の人物ばかりだったのだ。何よりも対象となる王子の人柄に驚かされた。
噂通りに素晴らしい人物、彼には国王の様なひ弱さも后の様な傲慢さも無かった。それは今までの世話役が必死になって彼を育ててきたからだとすぐに分かる。何故そんな中に自分が選ばれたのか不思議でならなかった。
自分はそんなに優秀ではない、ただがむしゃらに走ってきた勢いだけの人間だとハワード自身が自覚していたのだ。
既に満たされた状態の世話役に新たに加えられたハワード、その理由を教えてくれたのはデルクイヤだった。そんなことをナルの髪をなでながら思い出す。
「…私はがむしゃらに貴女を求めてここまで来た。辿り着いた時、貴女をさらって逃げるつもりでずっと走ってきた。」
「…ハワードさん。」
「でも、その考えは改めたよ。デルクイヤ様に教えられた。この国のこれからは決して悪いものにはならないのだと。」
それを担っていく私を助けてくれ。そう言われた時のことを思い出してハワードは目を細めた。
「私の執念を意志の強さだと評価してくれたあのお方の器の大きさには敵わない。でもそうして私は今の地位を得ることが出来た…ナル、君と少しは肩を並べられる近さに来れた。もう遠くで見つめるだけの日々は過ぎたんだ。」
「ずっと…私のことを?」
「ああ見ていた。」
十数年、自分の気持ちに蓋をし続けたナルとは違いハワードはその心に素直にナルを求めていた。それはとても嬉しいことなのだけれども、次第にナルは表情を曇らせていく。



