御劔 光の風3

「ハワード様。私に尋ねたい事とは何でしょうか。」

彼が一番最初に口にすること、それがおそらく彼が一番気になっていることだ。その思いを共有すべくナルは単刀直入にハワードへ問いかけた。

カルサのことだろう、そう思っていたのだが。

「申し訳ないのですが、陛下や殿下のことではありません。」

「…と、申されますと。」

「貴女にお会いしたかったのです。」

その言葉一つで、ナルの中の何かが壊れた気がした。

「ここに来る途中も気が気でなかった。…また貴女が手の届かないところへ行ってしまうのではないのかと心が落ち着かなかったのです。」

少しずつ近付いてくるハワードにナルの心臓は駆け出した。痛くて飛び出しそうになるのを必死に手で抑え込もうとする、無駄だと分かっていても胸の高鳴りは増すばかりだった。

「聞きたかったのは貴女の声。お願いしたかったのは…。」

目の前に立ったハワードにナルの瞳が揺れる。

「あの頃の私たちに時を戻すことです。」

そうしてハワードの両腕がナルを捉え、優しく彼女を抱きしめた。鼻を掠めるハワードの香り、これが昔と変わらないのかなんてナルにはもう分からない。ただ全身全霊で喜びに震えていた。

「ずっと会いたかった。…助けてあげられなくてごめん。」

ハワードの低く密やかな声がナルの耳に直接届く。まるで今まで必死に鍵をかけてきた思いを解き放つような言葉にナルの中の我慢は壊れてしまった。

完全な不意打ちに成す術もない。

「…うっ。」

短い嗚咽、震える肩、それが始まりにナルは大声を出して泣き崩れた。必死で繋ぎとめるようにハワードの背中に両手を回し、離れまいと力を入れて抱き寄せる。

やがて力を無くしたナルは抱きしめたまま座り込みハワードの腕の中で泣き続けた。

ハワードの腕にも力が入る。彼の身体が震える事なんて全く気が付かない程、ナルは無心で泣き続けたのだ。