御劔 光の風3

「王位を継いだ者として当然の務めです。」

一人の人として詫びていると言ったデルクイヤ、しかし彼は自分が王族であるということもしっかりと踏まえて言葉をつづっていたのだ。

「本当に…どうしたら陛下の様なお子が育つのでしょうか。」

無礼も承知でナルは思わず笑いながら口にしてしまった。それはつまり彼の母親を良くは言っていないことになるのだが、苦笑いのデルクイヤは言われても仕方がないと諦めているようだ。

「私には教育係が五人もいてくれました。多種多様な考えを常に聞き入れながらも王としてそれに対応できるようにと昔から言われています。彼らが良くも悪くも色々と教えてくれた。」

「そうですか。」

何となくは感じていたが、やはり彼の母親は殆ど育児に関わってはいなかったのだろう。口を開けば自分の見映えや価値観などとにかく自分主体な人だった。昔はそうでも無かったと苦笑いをしていたカオを思い出すが、やはり酷くなっただけという話で素質はあったようだ。

今さら彼女に興味はないが、おそらく特殊能力を持ったが故に特別扱いされた結果の姿なのだろう。その扱われ方には少なからずナルにも覚えはあるから。

「私たちの間に子供が生まれたら…同じ様に育てようと思います。今度は母親であるユーセシリアルも加わって皆を守れるような強い子に。」

彼の言葉がナルの考えを正しいと認めさせた。

母親と殆ど関わらなかったデルクイヤの気持ちもいくらか寂しいものはあるだろうが、彼はしっかりと未来を見据えている。無気力に近い自分から手を離していこうとナルは心を決めたのだ。

「お二人のお力になりたいと心からそう思います。どうぞ、このナルをお使い下さいませ。」

今度はナルが頭を下げる番だった。

「ナル…。」

慌てて止めるようなデルクイヤの声が聞こえたが、さらに強い感覚がナルの全身を包んだ。

ユーセシリアルがナルに抱きついたのだ。

「感謝します。ナル様。」

柔らかな感覚、優しく甘い香りがナルを包んでくすぐったい気持ちになる。ナルは両手を彼女の背に回してしっかりとその気持ちを受け入れた。

「ナルとお呼び下さい。ユーセシリアル様。」