御劔 光の風3

確かにまだ性別も分からないお腹の子を自然と男の子であると確信を持っていたのだ。そして后はさらにもう一人王子を生むであろうということも。それはカオも同じであろうと思っていた。

「そう。お二人も授かれるのですか。」

「カオ様?」

「ごめんなさいね、私にはそこまで感じることは出来ないのよ。占いをすれば見える未来もあるけど…貴女の様に感じて見える未来は少ない。貴女はとても特別な力を持った占い師よ、ナル。」

カオは立ち上がるとナルの手を取って部屋の中央にあるソファへと彼女を促した。二人以外誰もいないこの部屋には不思議と変な緊張感も生まれないほど穏やかだ。

「お后様も案じておられるのよ。この国の行く末を…だからでしょうね手段は選ばなくなってしまった。隠し事をしないという契約を交わしてしまった私には貴女のことを話すしか出来なかったの。」

「私は…。」

そうすればいいのだろうか、その言葉が出てこなくてナルは口を閉ざした。

「占い師として国に仕えるということは、今まで暮らしていた寮を出て城の中に部屋を当てられます。王族区域相当のその場所には官位あるものしか入れない、これまで交流していた方々とは会えることも無くなるでしょう。そして城より出ることも禁じられ、この部屋と自室のみの行き来になります。つまりは孤独になるということ。」

「孤独…。」

幼い頃に両親から言われたことを思い出してナルは力が抜けていく思いだった。二人が言っていたことはつまりはこういう事だったのではないのか、そう考えるとどれだけ両親が自分を案じてくれていたかを思い知らされる。

その両親にももう会えないのだろうか。

そして何より、ナルの脳裏には新しい記憶が浮かんで胸を締め付けた。

ハワード。

「貴女の大切な彼とも…会えなくなってしまうわ。」

胸にぽっかりと穴が開くと言うのはこういうことを言うのではないのだろうか。今まで忙しく働いていた思考が固まり、ナルの中にあった筈の気力が枯れて一滴も無くなってしまった。

明後日、彼と約束した城下の噴水の前で伝えるつもりだった思いも霞んで掴めなくなる。

「ごめんなさい。ナル。何度謝っても…どれだけ伝えても意味がないことは分かっているの。でも…本当にごめんなさい。」

耳に入ってくる声は少しも留まることなくそのまま抜けていった。