御劔 光の風3

城の奥にある王族区域、それ同等の場所にある別棟特別室に占い師の部屋がある。緊張しながらも赴くと中には二人の人影があった。

一人はナルの師となる占い師カオ、もう一人は評判宜しくない后であることに気付きナルは嫌な予感に囚われる。ただの女官を当てるにしては様子がおかしいと気が付いたのだ。

「こちらへ。」

呼び寄せたのはカオではなく后だった。ただその一言であったのにカオの表情が複雑なものを含んで苦笑いになる。それだけで具合の悪さが伝わってきたのだ。

「お前を今日より占い師としてカオに付けます。他所事に現を抜かさず国の為に尽くしなさい。」

状況が全く把握できていないナルには答えようがなかった。何も反応が出来ず固まったままのナルに不機嫌を丸出しにした后は顔を歪めて声を荒立てる。

「無礼な!私の声が聞こえないのか!」

后の声が響いた瞬間、大気が割れるように揺れて身体中にその振動が伝わった。ナルにはそれが特殊能力とされているものが働いたのだとすぐに分かったのだ。

后は音を力に変える、大気をも震わせる能力があるのだと。

それも手伝ってナルは途端に恐怖に襲われ震える身体を懸命に堪えながら頭を下げた。

「も、申し訳ありません。お后様。」

「これは命です。たった今より全ての業務から離れこの部屋で励みなさい。くれぐれも失望させないように。」

いくら大声で言いつけられても理解できない現状にナルは受け入れる返事が出来ずにいた。頭を下げたまま目を泳がせて自分が置かれている状況を必死に考える。

この部屋に呼ばれたのも占い師カオの世話をするようにと言われたからで、占い師になるという話は一切聞かされていなかったからだ。

はい、という言葉を発してしまえば全てが終わってしまうような気がして必死に口元に力を入れた。しかしまた特殊能力を使われたらと思うと平常心ではいられない。

現にナルの身体は歪みが出た様に痛みを感じているのだ。

「お后様。あとは私めがお預かり致しますので、どうぞお身体をお安めになってくださいませ。お腹のお子様に大事があっては大変です。」

カオの言葉に后は怒りを静めたのか、そのまま無言で部屋を後にする。外に控えていた数人の女官は后の付き人だったのだと彼女が去った後にナルは静かに理解した。