「ハワード。」
今度はより近く、目の前で呼ばれるように親しみのある声だった。
声の主は分かっている。きっと振り返れば彼女がいるのだろう、そう思い振り向いても人影はなかった。
途端、身体中に不安が広がっていくのを感じる。逆を見てもどこを見ても彼女の姿は全く見えなかった。ふいに湧きあがった淋しさから感情が乱れ、息が切れていく。その感情の原因も分からないまま不安だけが成長していった。どんなに探してもいない。
「ナル様?」
「ハワード。」
ハワードの声に答えるようにまた声が聞こえた。今度は上から、ハワードは導かれるようにゆっくり顔を上げる。
その瞬間、光の泡がハワードに降りかかった。
突然の出来事に驚き、反射的に受けとめるように身体が後ろにを引いてしまう。その弾みで彼の手にあった書類や荷物が地面にばらまかれてしまった。
しかしそんな事も気にならないほどハワードは光の泡に気をとられていた。まるで抱きつかれているようだと気付くのに時間はかからなかったと思う。懐かしい匂いがそこへ導いたからかもしれない。
「…ナル?」
彼の声に答えるように光はハワードから少し離れた。その瞬間、ハワードは目を大きく開く。光の中にいたのは懐かしい、出会った頃のナルの姿だったのだ。まだ若い、幼ささえも残したあの頃のナルに動揺が隠せない。
ハワードが何か言おうと口を開いた時、ナルは人差し指を出して彼の口にあてた。何も言葉はいらないと、そう諭すように微笑み、今度は彼女自身の唇で彼の口を塞ぐ。
それは一瞬にも永遠にも似た時間だった。
ずっと叶えたかった願い、ずっと思い続けた恋、ようやく叶ったこの瞬間に二人の記憶は大きく揺れてあの頃を思い出す。
何の運命か悪戯か、確かに惹かれあっていたにも関わらず手を携えることの出来なかった二人。
ナルとハワードが出会ったのはもう何十年も前のことだった。
今度はより近く、目の前で呼ばれるように親しみのある声だった。
声の主は分かっている。きっと振り返れば彼女がいるのだろう、そう思い振り向いても人影はなかった。
途端、身体中に不安が広がっていくのを感じる。逆を見てもどこを見ても彼女の姿は全く見えなかった。ふいに湧きあがった淋しさから感情が乱れ、息が切れていく。その感情の原因も分からないまま不安だけが成長していった。どんなに探してもいない。
「ナル様?」
「ハワード。」
ハワードの声に答えるようにまた声が聞こえた。今度は上から、ハワードは導かれるようにゆっくり顔を上げる。
その瞬間、光の泡がハワードに降りかかった。
突然の出来事に驚き、反射的に受けとめるように身体が後ろにを引いてしまう。その弾みで彼の手にあった書類や荷物が地面にばらまかれてしまった。
しかしそんな事も気にならないほどハワードは光の泡に気をとられていた。まるで抱きつかれているようだと気付くのに時間はかからなかったと思う。懐かしい匂いがそこへ導いたからかもしれない。
「…ナル?」
彼の声に答えるように光はハワードから少し離れた。その瞬間、ハワードは目を大きく開く。光の中にいたのは懐かしい、出会った頃のナルの姿だったのだ。まだ若い、幼ささえも残したあの頃のナルに動揺が隠せない。
ハワードが何か言おうと口を開いた時、ナルは人差し指を出して彼の口にあてた。何も言葉はいらないと、そう諭すように微笑み、今度は彼女自身の唇で彼の口を塞ぐ。
それは一瞬にも永遠にも似た時間だった。
ずっと叶えたかった願い、ずっと思い続けた恋、ようやく叶ったこの瞬間に二人の記憶は大きく揺れてあの頃を思い出す。
何の運命か悪戯か、確かに惹かれあっていたにも関わらず手を携えることの出来なかった二人。
ナルとハワードが出会ったのはもう何十年も前のことだった。



