御劔 光の風3

「貴方の事情はマチェリラから聞いたわ。カルサトルナス。」

圭はナルを見たまま、カルサに背を向けて話かけた。

「先に伝えておく。死者は二度と生き返らない。それだけは覚えていて。」

それは誰もが知るこの世の理。しかし強く自分に言い聞かせないといけない不安定でも大切な理でもある。少しでも希望を与えてしまう出来事に人はいつも翻弄されて見失ってしまうのだ。

「彼女に会えるのは一度きり、いいわね?」

圭の言葉にゆっくりと立ち上がる、それは圭も気配で感じていた。

「ああ。それで十分だ。」

カルサの答えを受け、圭は振り返り初めて真正面からカルサと向き合う。そしてその表情から覚悟を読み取ろうとした。

お互いにあの頃とは姿が違うなら抱えているものも背負っているものも違っている。言葉にできない複雑な感情が二人を締めつけた。なんと因果なものだろうと。

「始めるわ。」

圭はもう一度カルサに背を向けてナルに集中した。彼女の左肩に触れて空を仰ぐように辺りを見回す。

「まだ、ここにいるんでしょう?ナル・ドゥイル。」

低く撫でるような圭のその言葉をきっかけに耳鳴りのような高い音が静かに鳴り始めた。小さな音がいくつも重なり合って、いつしかそれは鈴の音のように響き渡る。

そこにある全ての物に音が反響しているように、高く低い様々な色を見せる音が鈴の音のように響いていた。その場に生まれてくる音は色付き姿を現す。

音が鳴り得ない自分の指や腕でさえも楽器の様だと思う程だった。半透明の球体が様々な色や大きさで生まれ、音と共に弾けて消える。それは言葉を失うほど美しく儚い夢のような気持ちにさせる無重力の感覚だった。

「カルサトルナス。」

圭がカルサを呼ぶ。

その目の先には自らの枕元に立つナルの姿があった。淡く色付いた姿はその身体を通して奥の景色が伺える、もう彼女には実体がないのだと改めて感じさせた。

目を閉じたまま、ナルは立っている。