御劔 光の風3

「ナル様!?」

勢い良く踏み出しレプリカはナルの方へ駈けていった。

「待って。」

静かな瑛琳の声にレプリカは足を止める。いつのまにか横に立ち、覗き込むように語りかけてきた淋しそうな表情に思わず目を奪われた。

「結界を外すから。静かにゆっくりと進んで。」

素直に従い、ゆっくりと一歩ずつ足を進めていく。血の気のない顔は全てを物語っている、おそらくもう二度とナルは微笑みかけてはくれないと分かった。

「ナル様!」

傍に立ち止まった瞬間にレプリカは膝から崩れ座り込んでしまった。涙を堪え、全身を震わせながら、やっとの思いで彼女の手を取る。片手で掴んだ手は冷たく、温めようと両手で強く握った。

それでもナルの反応はない。レプリカは必死で歯を食い縛り、決して涙を流さないように堪えていた。

「レプリカ。」

後ろから聞こえたのはカルサの声、それに応えるようにゆっくりと振り返った。いつしか全員が祭壇に集まっている。

ナルの顔を見つめながらカルサは静かにレプリカの傍に行き横に座った。レプリカはすがるような思いで彼を目で追っていく。しかし誰がどんなに強く願っても、ナルの身体は動かないのだ。

「覚悟はしていた筈だったが。」

争いの中に身を投じていれば必ず味わう生死の別れ、何度も経験した筈なのにその度に強く願い誓った筈なのに守り切れなかった自分が情けなくて仕方ない。

「聖と紅も生きている可能性の方が低い。俺たちは今ここにいる事が幸せなんだと思わないとな。」

切なく囁いた声が痛い、頭の中で反響する度にその言葉の深さは増していくようだった。自分が生き残れた幸運を痛い程に感じ取ると同時に甦る記憶があったことを思い出す。

さっき言えなかった言葉があった、しかし口にするにはかなりの覚悟が必要だ。でも伝えなくてはこの先の未来を深い闇で染めてしまいかねないとレプリカは覚悟を決めた。

「皇子。みなさんも。」

「なんだ?」

レプリカは声に出して皆の意識を自分のところに引き寄せる。今ここで言わなければ、自分の持つ情報を与えて開示しないとまた被害者を出してしまうかもしれない。揺れる思いを断ち切りレプリカは口を開いた。

「殿下の異変にお気付きですか?」