御劔 光の風3

「ご無礼を…。」

「顔を上げろ。」

涙を拭い言われたように顔を上げる。必死で涙をこられるように食い縛る姿はどこかリュナに似ている気がしてカルサの心を和らげた。

「お前には嘘をつけない。ごまかしも曖昧な態度も、逃げる事も出来ない。」

予想もしない言葉に必死で食い縛る気持ちが和らいだ。いつのまにか目の前にいるカルサは優しい表情をしていた。

カルサは千羅に傍にくるように促し、近くにきたのを感じると再び視線を前に戻す。

「お前には感謝している。リュナに会わせてくれた、あいつをいつも支えてくれた。今は俺を案じてもくれている。」

カルサの言葉にレプリカは何度も横に首を振った。

「俺は近いうちにヴィアルアイの許へ辿り着くだろう。きっとそれで全てが決まる。太古の時代は終わり、新時代に変わるはずだ。」

太古と呼ばれ追憶の中にしか存在しないとされている時代は終わってなどいない。今も尚、因縁という形で縛られ身動きがとれないまま抜け出せずにいるのだ。たとえ王が変わろうとも、それ以外何も変わらなければ意味がなかった。

この沈黙の時代は終焉へと向かっている。

「オフカルスの事は俺たちに任せてくれ。今見た様に本音でぶつかり合える仲間がいる。」

カルサは千羅の方を横目で指して微笑んだ。千羅からは見えないだろうカルサの表情は声色から想像できたのだろう、その時の千羅の照れくさそうでもどかしい複雑な表情をレプリカは見逃さなかった。千羅の抱えている大きな想いを感じ取っていた。

「お前たちが思う程には最悪な結末にならないと思う。不思議とそんな気がするよ。」

穏やかな気持ちで出た言葉は二人の意識に変化を与える。自然と顔が上がりカルサへと視線を向ける二人の視線を感じたカルサは微笑んでみせた。

「ただ表面に色んな事がありすぎると俺もブレてしまう。有難い事に軌道修正をしてくれるのが千羅と瑛琳なんだ。」

突然の話の展開に千羅は思わず目を丸くしてしまった。今まで感謝の気持ちを聞いた事が無いわけではなかったが、ここまで深い心の内を話してくれたのは初めてだったのだ。