御劔 光の風3

「ある人が俺にこう言ったんだ。皇子が起き上がるまでここにいます。って。」

カルサの言葉に千羅は思わず目を大きくした。何故ならそれはついさっき自分が放った言葉と全く同じだったから。

「それを言ってくれたのは確か、大地の力を持つ神官バンだった。」

千羅の目が揺れる、初めて触れる自分の源に手が止まってしまった。

「あの時、その場にヴィアルアイも居たような気がする。」

あの時の反応を見ると太古の記憶に少し触れたのかもしれないと思ってしまう。カルサは深いため息と共に目を閉じた。

千羅はそんなカルサの様子を伺っていたが再び手を動かし始める。手際良く止血を行いながらカルサが今考えている事を感じていた。

「私は自分の前世について何も知りません。次に機会があれば、話してもらえませんか?バンと私は似ているようですし。」

千羅が微笑む。いつのまにか終わっていた手当ては、痛みを拭っていくようだった。

「ありがとう。」

カルサがそう告げた瞬間、そう遠くない場所でリュナの風の力が発動しているのを感じた。千羅は思わず立ち上がる。

今までに感じたことのない激しい風の力は、リュナの感情を表わしているようにしか思えなかった。カルサも立ち上がる。

「行くぞ。」

カルサの声をきっかけに二人は走り始めた。そして意識は現在に戻る。

「この傷だけで今回は済んだ。」

大聖堂の中、カルサは膝をたて手を組んだまま話を終えた。誰もの視線がカルサの胸へと向けられる。

既に着替えていた服はどこも破れてはいない、服の下にある傷の深さを今は見ることができなかった。

「傷は痛むのか?」

貴未の問いにカルサは首を横に振る。ならばもう触れることは出来ない。