「連れていかれたのか、自分で行ったのかは分からないが…きっかけはそこだろう。今回の目的はリュナだった。おそらく、そういう事なんだろうな。」
疑問を口にしようとする貴未の言葉を遮りカルサは告げた。厳しい表情は焦りを表わしているようにも見える。あれだけ走り回っても結局また後手になってしまったのだ。
黙り込んでしまった貴未も頭を抱える。しかしそれも少しの間の事で貴未は再びゆっくりと顔を上げた。
「魔物が引く少し前、聖を見た。」
全員が息を飲んだ。
「血塗れの姿で腕に紅を抱えて。なんか様子がおかしかったように見えた。」
「様子が?」
「消える、いなくなる、なんかそんな雰囲気だった。」
消える、誰もがその言葉を心の中で呟いた。
「あの時、聖は俺に気付いてたと思う。」
遠い目をしてその瞬間を思い出す。
遠くの方、城の、もう魔物によって突破された辺りに聖はいた。扉が豪快に壊され、さらに壁に穴が開き大きな入り口がそこには出来ていた場所だった。
砂埃が舞い本来ならはっきり見える範囲なのにぼやけてしまう程の視界の悪さ。しかし馴れ親しんだ相手、そこに立っているのは聖だと貴未には確信できた。その腕に抱えているのが紅だということも不思議なもので雰囲気から確信できたのだ。
確かに聖もこちらを見ている、二人は少しの間互いを見つめ合い動かなかった。やがて聖は方向を変え、さらに視界が悪い方へと姿を消してしまったのだ。聖と何度も名を叫ぶ貴未の声に、彼は一切反応を示さなかった。
「そうか。」
一連の流れを聞き終えたカルサは自分の中で処理しながら呟いた。
「その時は…少なくとも聖は生きていたんだな。」
カルサの言葉に少し俯き加減だった一同は皆顔をあげた。カルサの小さな呟きは強く響く。落胆の色を見せるカルサを見逃せない千羅と瑛琳は顔を合わせ頷いた。
疑問を口にしようとする貴未の言葉を遮りカルサは告げた。厳しい表情は焦りを表わしているようにも見える。あれだけ走り回っても結局また後手になってしまったのだ。
黙り込んでしまった貴未も頭を抱える。しかしそれも少しの間の事で貴未は再びゆっくりと顔を上げた。
「魔物が引く少し前、聖を見た。」
全員が息を飲んだ。
「血塗れの姿で腕に紅を抱えて。なんか様子がおかしかったように見えた。」
「様子が?」
「消える、いなくなる、なんかそんな雰囲気だった。」
消える、誰もがその言葉を心の中で呟いた。
「あの時、聖は俺に気付いてたと思う。」
遠い目をしてその瞬間を思い出す。
遠くの方、城の、もう魔物によって突破された辺りに聖はいた。扉が豪快に壊され、さらに壁に穴が開き大きな入り口がそこには出来ていた場所だった。
砂埃が舞い本来ならはっきり見える範囲なのにぼやけてしまう程の視界の悪さ。しかし馴れ親しんだ相手、そこに立っているのは聖だと貴未には確信できた。その腕に抱えているのが紅だということも不思議なもので雰囲気から確信できたのだ。
確かに聖もこちらを見ている、二人は少しの間互いを見つめ合い動かなかった。やがて聖は方向を変え、さらに視界が悪い方へと姿を消してしまったのだ。聖と何度も名を叫ぶ貴未の声に、彼は一切反応を示さなかった。
「そうか。」
一連の流れを聞き終えたカルサは自分の中で処理しながら呟いた。
「その時は…少なくとも聖は生きていたんだな。」
カルサの言葉に少し俯き加減だった一同は皆顔をあげた。カルサの小さな呟きは強く響く。落胆の色を見せるカルサを見逃せない千羅と瑛琳は顔を合わせ頷いた。



