御劔 光の風3

「誰の仕業かは予想がつく。」

怒りを表に出している。内に収める事ができない程の強い感情は遠慮できない程カルサを振り回していた。

カルサの言葉が一体何の事をさしているのか聞きたかったが、あまりの様子にさすがの貴未も口を開けない。

しかし少しの間続いた沈黙を終わらせたのは貴未だった。

「あの後、俺は魔物の侵入を防ぐ為に西門に行ったんだ。着いた時にはもう戦いが始まっていて、とにかく数が多いし確実に倒していく事に必死だった。」

自然と皆の視線が貴未へと集まる。改めて見ると汚れが重なったぼろぼろの服は貴未の戦いを物語っているようだ。破れている箇所はいくつかあるものの、やはり深い傷はなさそうだとそれぞれが胸の内で撫で下ろす。

「全部で二回、リュナの風の援助があった。そのお陰で俺たちは大分被害が少なくすんだと思う。」

リュナ、その名を聞くだけでカルサの手に自然と力が入る。その仕草に誰もが気付いていた。

「それでも魔物が次から次へと後を絶たなくて。必死で向かってくる敵と戦って、他も気になってたんだけど…そこから動けなかった。」

こちらに不利な持久戦、絶え間なく押し寄せる敵を迎え撃つのにも限界がある。少しずつ力尽きていく者が現れ始め、分が悪くなってきた時だった。

カルサの結界で大半の魔物が弾き飛ばされ、中にいた魔物も苦しみながら倒れていったのだ。

「中盤くらいにカルサが結界を張ってくれただろ?あの時は本当助かったよ。さすがの俺もヤバいと感じてたからさ。」

苦笑いしてみせた貴未の姿は恐怖を背負っているようにも見えた。両手を見つめ、握ったり開いたり感覚を確かめる。

「今生きてるのが嘘みたいだ。沢山の人が死んでいった。」

目を開けていても鮮やかによみがえる記憶、脳裏に焼き付いて離れない惨劇は貴未の身体を震わせた。

「何でか急に魔物が引いて助かったけど、あれはカルサが何かしたのか??」

「いや。」

カルサの答えは早かった。

「おそらく、リュナが捕まったんだろう。」

「リュナが!?」

カルサは頷いた。貴未は驚きから口が開いたままになる。