御劔 光の風3

「当たり前だ!あいつは…って、え?」

カルサは思わず言葉を止めた。周りを見ても全員がきょとんとした顔でカルサを見ている。

「なんだ…違和感があるな。とにかく、日向はテスタの所に送った。一先ずは安心だ。」

「テスタの所…なるほどね。」

マチェリラが感心の声を上げる。千羅も瑛琳もそれに頷いたが貴未だけは疑問符を並べてまた挙手をした。

「テスタって誰?」

「界の扉の番人だ。古の民と聞いていますが。」

貴未の問いに答えたのは千羅だったが後半の言葉はカルサに投げたものだ。カルサは頷き付け足すように答えた。

「テスタは時空の狭間にいるから時間というものに捕らわれない人物だ。太古から今まで生きているが、テスタにとって俺たちの一生は一時間位に感じるのかもしれないな。」

「一時間!?」

「彼はそれ程に時間というものに縛られないの。あらゆる世界に通じ、その過去も現在も把握している。彼は時折、未来さえも垣間見ると言われているわ。」

貴未の叫びに答えたのはマチェリラ、しかしその言葉には貴未以外も圧倒されていた。貴未は衝撃の新人物に押されているようだ。

「あいつの事だ、太古の事件は先に知っていただろうな。」

「でも未来は変えられるものじゃない。」

カルサが特に何かを含む訳でもなく吐き捨てる、それに添えるようにマチェリラが呟き誰もが黙り込んでしまった。やりきれない思いが彼らから言葉を奪う。

「そんな凄い人の所に日向を預けたのか?」

こんな空気にも負けない貴未から疑問が飛んだ。

「全空間、全世界の中で安全な所は無い。唯一がテスタの傍だった。俺たちは日向を失う訳にはいかない。」

何とも言えない淋しい空気がカルサを纏う。やはり抜けきらない煙の中にいても彼の背負う闇は気になってしまった。