御劔 光の風3

この人も特別な何かを持っている、理由もなくそう感じたことにエプレットは疑わなかった。

「今から見ていく事は全て真実だ。あの時の様に隠すことはしない。自分で見極めて判断して、その思いを大事にしてくれればそれでいい。」

「また何か起こるんですか?」

千羅の言葉に不安を覚えてエプレットは尋ねる。

頭の中では走り出す前にカルサから言われたことが回っている、きっと同じことを告げているのだろうと分かっていても決め打ちをして欲しかった。

「おそらく…あれ以上のことが起きる。でもその先に何が待っているかは俺には分からない。」

そう言って千羅はエプレットの腰辺りに付けられた小さな鞄に目をやって触れる。

「光玉か。」

「…先ほど陛下から託されました。」

蓋をされたままの鞄の中身を言い当てられてエプレットの中に緊張が走った。

自分とは違う、カルサの方に近い存在に震えるなんて今さらかもしれないが少しの恐怖を感じたのは事実だ。

「自分を見失わずに、もしこれを使うときがあれば決して舵を離さないで…思いを貫いてくれ。」

意味が分からないだろうがよく覚えていてほしいと告げると千羅は手すりに足をかけて身体を乗り出した。

「悪いがここからは俺に譲ってほしい。」

「譲るとは…。」

「あいつは俺が必ず守るから。その役目を俺に渡してくれないか?」

足を下ろせばそのままカルサが立つ屋根の上へと降り立つことが出来る、しかし千羅はまだ見張りの塔の枠の中からエプレットに申し出た。

屈んでいるとはいえ目線は見下ろす形になる。

願いをするには無礼な態度かもしれないが気持ちを表したかった。