御劔 光の風3

状況は悪い。でもきっと知らないことが弱さになる。

「カルサのとこに行こう。」

貴未の目に迷いはない。彼から差し出された手をマチェリラは握り二人は一瞬にして姿を消した。

ある程度の結界を張り終えるとカルサは屋根の上から国が見渡して眉を寄せている。

ここはあのフェスラと戦い貴未と同盟を組んだ場所だ。

魔物の大群はまっすぐに城に向かっている、サルスの読みは当たっておりその規模に悪寒が走った。

まともに戦って勝てるのだろうか。

進みくる大群は一方向ではないが、他の場所はさほど気に病むほどでもなかった。

そう、問題は地平線をも埋め尽くすほど群れがある一方向をどれだけ犠牲が少なく打ち負かすかだ。

考えている時間も勿体無いと思ってしまうが考えないとがむしゃらだけで勝てる相手ではない。

二手三手、さらには奥の手まで広げて守る方法を頭の中で組み立てていく。

「陛下、危険です。お止め下さい!」

エプレットの制止を聞かずにカルサはそのまま屋根の上で思考を巡らせた。

考えを進めるには場所はどこでも構わないだろう、しかし自分の目でいま置かれている状況を確認している方がより回転が良くなるとカルサはずっとこの場所を気に入っている。

たとえそれが国のことでも御劔のことでも、結局は目に映るこの国を守ることに繋がっていくのだと考えているからだ。

「陛下!」

「はい、ごめんよ。側近さん。」

見張り台の塔から声を張り上げるエプレットの横に緊張感を持たない口調の千羅が姿を現した。

何の気配もなく横に立つその人物の顔を見て頭の片隅で何かが引っ掛かる。

「…貴方は。」

エプレットの声に反応し千羅は片眉を持ち上げて寂しげな笑みを浮かべた。