御劔 光の風3

サルスたちがいる部屋から外に出て、民が集うこの部屋に集中して結界を張る。

「ちょお、どいといてくれ!」

周りにいた人間を散らして聖は両手を組み気合のような短い唸り声をもらした。

たちまちに鼓膜を圧迫するような大気の揺れを感じてその場にいた者たちはさっきまでの変化を認識する。

状況の変化は分かれど内容が理解できない人々はどう反応していいのか困惑していた。

「まだや。」

困惑の気配を察知した聖が指示を出す。

結界の強度を上げる為に二重、三重にしていく聖の作業を貴未は間近で見ていた。

鮮やかな手付きは熟練ならではだと感心させる。作業が終わった頃を見計って貴未は聖の許へ近づいていた。

「さすがだな。」

「いや。」

そう交わすと二人は空が見える場所まで歩いていく。空耳かも分からない低い唸り声が響く薄暗い不気味な空、何度見上げても変わることはなかった。

「カルサの結界が城を守っとる。せやけど、遠征でやった俺らの結界は確実に破られてもた。」

「まじかよ…。」

「城を囲う様に作ったやつがな。集落のはまだ気配かんじるから無事や思うわ。」

しかし安心することが出来ない情報に貴未の表情は変わらない。

「せやから…あかん言うてんねん。」

聖の怒りのこもった声は貴未を驚かせた。固く握られた拳、滅多に見せない強い感情は不安さえも巻き起こす。

焦りからではない明らかに憤りが積み重なった言葉を吐き捨てると聖は貴未に背を向けて歩き始めた。