御劔 光の風3

カルサの決断に老大臣は頷くと近くの兵士に聖を見つけて命を話すように指示した。

「老大臣はここの統括を頼む。」

それぞれが動き始めた中でカルサがハワードに告げた言葉は誰もの耳に入った訳ではない、しかし次に返されたハワードの言葉は何故か動きを止めさせるほど強く耳に響いたのだ。

「陛下が出なければいけないことでしょうか。」

それは不満から出た言葉ではないことくらいは分かる。

不安から出た、今回のことの大きさをどう判断すればいいかの指標が欲しかったのだ。

「ああ。私が行く。」

強い口調はそうせざるを得ないと皆を納得させるものだった。

ハワードは固く目を閉じて厳しい表情を浮かべながらもゆっくりと目を開ける。

「お気をつけて、いってらっしゃいませ。」

こんなことは未だかつて無かった、前回のことがあっての判断なのかもしれないと考えが頭をかすめたが様子が違うこともまた明らかだ。

ハワードと目を合わせた後、カルサは何も言わずそのまま背を向けて歩き始めた。

「ご武運を。」

大臣の声はその場に置き去りにされたようにカルサの耳には届かない。

次の目的地を定め可能な限りの速さで歩いていく。

ここで焦っては周りを不安にさせるだけだと、いつでも上に立つ者は悠然と構えていなければいけないのだ。

とりあえず外の現状をこの目で見ようとカルサは城壁の上にある展望台に向かうことにした。