……何も言えなくて黙り込んでいると、先輩が一歩あたしに近づいてくる。
「……困るんだよ。
そんな突然言われても……」
……そうだよね。
もうすぐ予選が始まる大事な時期だし……。
「後任は今月中に何としてでも見つけますから……」
……一歩一歩先輩が近づいてくる。
あたしはゆっくり後ずさりをする。
「そうじゃなくて……。
……そうじゃないんだよ」
「大丈夫です。
マネージャーやりたいって子、何人かいますし……。
先輩達の迷惑にはならないように……」
「……梨乃」
……何で……
何でさっきからあたしの方に近寄ってくるの……?
先輩が近づく度にあたしは一歩下がる。
だけど、狭い部室の中じゃそんなに下がる場所もなくて……
……あっという間にあたしの背中は冷たいロッカーにピッタリとくっついてしまう。

