先輩と私。



……先輩の視線があたしに注がれている。


それを感じると、なかなか次の言葉が言い出せなかった。


あたしが口ごもっていると、ヒロ先輩は不意に立ち上がってあたしの顔を覗き込む。


「梨乃?」

「っ………!」


先輩の顔が近くに来て、あたしは思わず視線をそらしてしまう。


こんな時なのに胸がドキドキしてしまう……。


でも……言わなきゃ。

言うためにここに来たんだから……。



「あ、あの……あたし……」

「ん?」


言いづらい。

……言いづらいけど――


「……部活……やめます」

「…………は?」


先輩はポカーンと口を開けたままあたしの方を見て固まった。