「せ、先生......採血って......」



「そうでも言わないと、2人きりになれないだろ」
そう言って、ヒロトは微笑んだ。


「先生......私、てっきり、嫌われたのかと思って......」


「あはは。違うよ。最近、学会とかで忙しくてね」


「そうだったんですか。......良かった......この数日間、生きた心地がしなくって......」



「じゃぁ、今週の金曜日にでも、またご飯行くか?」



「はい!嬉しいです!」
沙也加の表情は一気に明るくなり、赤味が増した。



沙也加が「じゃぁ」と、診察室を出るとあまりに明るい表情なのを花岡は見逃さなかった。



沙也加達がクリニックを後にしたのを見計らって、花岡が診察室に入って来た。



「先生!」


「ん?」


「何、話していたの?」


「何って?」


「とぼけないでよ。また谷村さんと何かあるんでしょ?」



「何もないよ」


「どうかな?先生、以外と女好きだし」


「そんなことないよ」



「じゃぁ、浮気しないでよ?先生の愛人は、私一人で充分でしょ」