「別に、あたしがむかついただけだし」
「大きなお世話ですけどね」
「かっちーん!」
ホントどうしてこの男は素直に受け止めないんだっつーの!
あたしのリアクションに声を出しながら沙希は自然に笑った。
どきっ
と音を立てて胸の奥が跳ねあがる。
・・・・・・・・・って、どきってなんだよどきって。
いくらこいつがかっこいい顔してるからって中身を思い出せ、鈴。
迂闊な自分を反省して、頭を壁に叩きつけたい衝動に駆られていると、そんな心も露知らずに、
「鈴様」
と犯人に声を掛けられた。
「何?」と、必要以上に冷たい反応をしたにも関わらず、沙希は穏やかに微笑んでいて。
「SPとして、私はいつでもどこでも貴方をお守りいたしますから」
その言葉が終ると同時に校内に響く、どこか高級な音のチャイム。
あたしは、「・・・うん」とだけ返事をしてくるりと前を向いた。
バカじゃないの。
バカじゃないの。バカじゃないの。バカじゃないの。
【いつでもどこでも・・・ってお前は忍者か】
(そんな突っ込みをしてないと耐えられないくらい、動悸が収まらなかった)
(こんな熱い顔、絶対誰にも見られたくない)
(・・・って数学全然分からないんだけどぉぉぉぉ!?)

