「貴方、その後ろの方の紹介はなさらないの?」
俯くと同時に掛けられた声に、すぐに顔を上げる。
すると、あたしのすぐ目の前・・・最前列の真ん中に座る女の子が誰よりも冷たい視線であたしを睨みつけながら立ちあがっていた。
前髪をセンターで分け、緩いウェーブが当てられた栗色の長い髪。
つり目気味の大きな瞳にきりっとした眉。
きつい顔をしてるけど、この人も相当な美人だなぁと思った。
そして、彼女が口を開いたことで教室の中にざわめきが広がる。
「あ、え・・・?」
後ろの人って沙希のことだろうか。
あたしは沙希と彼女の顔を見比べるように挙動不審に顔を動かす。
「そうよ!」とイライラした様子で彼女は腕を組んだ。
沙希の紹介もしなきゃいけないんだ、だからみんなあたしの顔を見つめていたのかもしれない。
あたしは急いで口を開こうとしたけど、
「何?貴方自分の所有物の説明も出来ないの?」
という彼女の発言によってそれは叶わなかった。
ぴくり、とこめかみが反応する。
「所有物・・・?」
「そうよ、SPや執事は所有物でしょ?」

