「あぁ、あれですか」
しばらく待って、沙希は合点がいったようだった。
「そーだよ!」と言うあたしの言葉はとげとげしくて、お嬢様云々前に女の子らしい可愛げもない。
完全に不貞腐れているあたしを見て、沙希は困った顔をして少し瞳を細めた。
「・・・あれは、頑張れという意味を込めたつもりなのですが」
「!!」
その言葉は、沙希の口から聞くにはあらゆる意味で心臓に悪い。
───は、反則だそんなの・・・!!
跳ねあがった心を表すかのように、あたしの喉はからからに乾いてしまって声が出てこなくなる。
「そんなに意外ですか?」と沙希は苦笑した。
「さ、沙希の普段の行いが悪いんだよ!」
そう言ってあたしは沙希から目を逸らして前に向ける。
タイミング良く着いた『2-A』と書かれた教室の前で、更科先生が待っていた。
「頑張れよ」
赤くなった顔を隠すのに必死だったあたしは、更科先生の言葉の意味も、意味深な表情も全然気付かなかった。
八つ当たりとでもなんとでも言えばいい。
沙希のせいだからね!!

