なんか嬉しくないのはどうしてだろう、と思いつつ彼の顔を眺める。
けれど、いつまでも待ってもこの先のあたしを攻撃する言葉は出てこなかったし、
何よりこの嫌味マシンから“高評価”という言葉が出てきただけ素直に喜んでおこう。
そう思って、だいぶ間をとりつつも「ありがとう」と伝えれば「どういたしまして」とお決まりの言葉が返ってきた。
「でもさ、だったら何も校長先生の前でまで背筋のこと言うことないでしょ!」
そうだよ、あたしなりに思い出して頑張ろうとしてたのに。
ふ、と背中を叩かれたことを思い出して抗議するようにあたしは唇を突き出した。
なのに沙希は首をかしげる。
「なんのことです?」
「あたしがソファに座った時背中叩いたじゃん、沙希」
誤魔化すなんて許さないんだからね!という意味を込めて言ったつもりなんだけど、
沙希はどうやら本当に思い当る節がないらしい。
思い出すように宙を見つめるその小綺麗な横顔に、「なによ、あたしの注意はオート機能ですか」と嫌味を言い返してやりたい。

