なんかへんなところある?
そう思って頭や顔や身体をぺたぺた触って、尋ねるように沙希を見上げる。
沙希は呆れたようにため息をつくと、綺麗な手で更科先生をさした。
つられてそっちを見て、今度はあたしが目を丸くする。
だって更科先生がクスクス笑ってるんだもん。
「神谷家のお嬢様って聞いていたから、きっと見たこともないような深窓のお嬢様が来ると思ったんだけど、ずいぶん親しみやすいね・・・っ」
そう言って、更科先生は震える肩を隠すことなくおなかと口を押さえて笑いだした。
ちょっと、どういう意味ですか。
不貞腐れていると、校長先生が「更科くんは一般の家の育ちなんだけど、私がスカウトしたのよ」と教えてくれた。
「あぁ、同じ環境出身か」と思ったら一気に親近感が沸いたけど、でもやっぱり飲み込めない。
神谷の名前を使っても庶民オーラは消えないってことでしょ、要は。
「仲良くなれそうでよかったよ」
そんなあたしの複雑な心境を知るはずもなく、更科先生は屈託ない笑顔を見せた。
「いい先生で良かったです」と言ったあたしの顔が引きつってないと思いたい。

