「いえ、」とひきつる口元で言って、こっそり後ろの沙希を盗み見る。
「だから特訓が必要だって言ったでしょう?」とその嬉しそうな顔に書かれていた。
うん、なんとなくだけど、やっとわかったよ。
「でも、厳しい代わりに、優秀な学生を表彰することもあるから頑張って」
ご褒美もあるのよ、と校長先生は微笑む。
あぁ、きっとその“ご褒美”もあたしなんかの想像つかないレベルなんだろうなぁと遠い目で思った。
(でもどんなに高いものより、あたしとしてはケーキバイキングのタダ券とかの方が嬉しい)
「ところでだけど、貴方の事情はこの学園だと私ととある生徒しか知らないわ。
その生徒は・・・まぁ沙希君が知ってるから会ったときに教えてもらいなさい。
だから、どんなに仲いいお友達でも先生でも、決してアフロディーテのことは言わないこと。
神谷の名前は『遠い親戚』とでも言って誤魔化すようにね」
はーい、と言いかけてあたしは口をつぐんだ。
返事は伸ばすなと沙希に散々しかられたんだっけ、と思い出したから。
その結果、「はー・・・はい」とくしゃみを我慢するような逆に失礼な返事になってしまった。
(沙希の視線が痛い・・・)

