「んな!!」と声を上げてあたしはすぐさまバッヂから手を離す。
なんてものを素手で触ってたんだ!
そんな慌てふためくあたしの様子を見て、面白い子ね、と校長先生は声をあげて笑った。
「Aクラスは金、Bクラスは銀、Cクラスは銅、そしてDクラスはただの黒鉄(くろがね)。
この学校の事務員や警備員、非常勤講師、来賓者、すべての方が一目で貴方達の地位を見分けられるようにしているわ」
「・・・」
「それと同時に各自のバッヂの裏には名前が彫られているし、中にはGPS用のICチップが埋め込まれているの。
だからいかなる人の替え玉も、侵入も、誘拐も、学生自身の無断欠席も決して許しはしない」
淡々と校長先生は話しているけれど、その内容は普段のあたしの生活とかけ離れた世界の話。
関わっていなかっただけで、本当にこんな世界があるのだとあたしは唖然と口を開くしかなかった。
「この学校では紳士淑女の養成をメインとしているから、鈴ちゃんの意向や生活にそぐわない校則や授業やイベントがあるかもしれないけれど、許してちょうだいね」
あたしの固化を、内容ではなく監視の厳しさにあると勘違いしたのか、校長先生はちょっと見当違いなところを謝罪した。

