「待たせてしまってごめんなさいね」
がちゃっとドアが開いた音にあたしははっと顔を上げた。
反射的に身体が跳ねてしまったのか、中に入ってきた見るからに高そうなスーツを着た女性は「驚かせちゃったかしら」とメガネをあげながら悪戯っ子のように笑う。
「いいいいいいえ!」と必死に答えたが、隣の沙希の目が痛い。
(頑張って背筋伸ばすから許してくれないかな)
「話は従兄から聞いてるわ。ずいぶんと災難な目にあったのね、真城さん」
あたしたちが立っている前に用意されたアンティーク調の机の椅子に腰かけたこの人は、やっぱり校長先生なんだと気付く。
まさか女の人だなんて、と予想外すぎて思わずびっくりしてしまった。
そしてこの“従兄”というのは、年齢的にきっと病院の神谷先生のことなのだろうと思った。
鈴ちゃん、って呼んでもいいかしら?と聞かれてあたしは大きく頷いた。

